毎日歯磨きしていても、付着してしまう歯石。歯石とは、歯の表面に付いたねばねばしたプラーク(歯垢)が石灰化した、石のように固まったものです。歯石自体に病原性はないとされていますが、歯石にはプラークが付着しやすく、歯ぐきに炎症を起こしたり、さまざまな影響を及ぼしたりします。そんな歯石ですが、できやすい人には特徴があります。今回は歯石ができやすい人の特徴や、生じやすい箇所、放置することで起こるリスクなどを解説いたします。
歯石ができやすい人の特徴
歯石は唾液中のミネラル成分(カルシウムやリン酸)が、プラークと結合することで石灰化して形成されます。そのため以下のような特徴を持つ方は、歯石ができやすい傾向にあります。
唾液がアルカリ性寄りになりやすい(PHが高い)
プラークの再石灰化をうながすミネラル成分は、アルカリ性に寄った唾液のほうが多く含まれています。そのため、唾液成分がアルカリ傾向を示している方のほうが歯石が生じやすいと言われてます。
唾液の量が多い
唾液の量が多いということは、唾液の中に含まれる再石灰化をうながすミネラル成分も多く含まれるので、歯石ができやすくなります。
唾液がさらさらしている
さらさらした唾液のほうがねばねばした唾液よりも、再石灰化をうながすため歯石ができやすくなるのが特徴です。再石灰化は、酸で溶かされた歯を中和して修復する作用があるので、歯石ができやすい人は虫歯になりにくいとも言えます。反対に、歯石が付きにくい人は、虫歯になりやすい傾向があります。
どこに歯石はできやすいか?
歯石はどこにでもできる可能性がありますが、特にできやすい箇所がいくつかあります。
下の前歯裏側
下の前歯の裏側には唾液腺の開口部があります。唾液の出口があるため、歯石ができやすいのです。実際に下の前歯の裏側を舌で触れてみると、ザラザラしている方も多いと思います。
上の奥歯頬側
上の奥歯の頬側にも唾液腺開口部があります。この部分は歯ブラシが届きにくくプラークが溜まりやすい場所です。そのため歯石ができるには絶好の場所となりやすいのです。
歯石を放置するリスク
歯石はなぜ取らなくてはいけないのでしょうか。実は歯石があると、口の中だけではなく、他にもさまざまなトラブルを及ぼすこともあります。
歯周病が進行します
歯石にはプラークが付着するため、歯石をそのままにしておくと歯周病が進行していきます。歯周病は自覚症状がないまま進行することも多く、自分の歯ぐきは健康で問題ないと勘違いしてしまうことがあります。歯石は歯周病のはじまりとなりますので、症状が無いように思えても、早めに除去しましょう。
口臭を引き起こします
歯に歯石が付くと歯周病が進行し、歯と歯ぐきの間に歯周ポケットが形成されます。歯周ポケットは細菌が好む格好の条件が揃っています。嫌気性の菌は代謝過程で「硫化水素」や「メチルメルカプタン」を産生するので、口臭のもとになるのです。また重度歯周病になると、歯ぐきから膿が出てきて、さらに強い口臭を引き起こします。
見た目の印象が悪くなります
歯石は目に見える部分に付着することもあります。特に歯ぐきの下にできる歯石は血液と混じって黒くなるのが特徴です。そのため、歯周病で歯ぐきが下がってくると、外から見ても目立つようになります。歯石があると不潔に見えるので、早めに取り除いて清潔な印象をキープしましょう。
全身疾患に関係しています
歯石を放置して歯周病になると、歯ぐきから出血するようになります。結果的に、さまざまな細菌が血管内に入り込み、全身をめぐることで、動脈硬化や高血圧、脳卒中といった全身疾患のリスクを高めてしまうのです。また、歯周病は糖尿病を悪化させる要因にもなることが明らかになっています。つまり、歯石を除去することはお口の中の健康だけではなく、全身疾患の予防にも繋がります。
まずは歯科医院で歯石除去。同時にセルフケアで対策
歯石は主にプラークと唾液から出来るということがわかりました。しかし唾液による再石灰化は、虫歯を防ぐうえで必要な作用です。そのため、大切なのはプラークを溜めないように気をつけて、できてしまった歯石は歯科医院で速やかに取り除くことが大切です。 しばらく歯科医院に行ってない方は、ぜひプロによるクリーニングと正しいブラッシング方法の指導を受けましょう。毎日の歯磨きの質を上げて、定期的な通院を続けることで、歯石を放置するリスクを抑えられます。